シンク下の排水管をチェックする作業員
更新日:2025-09-27
建築
環境・設備

はじめに:見えないところで家を支える「水のインフラ」


多くの人が家づくりで重視する「外観」や「間取り」の影に隠れて、その快適な暮らしを根底から支えているのが給排水設備です。まるで人体の血管や消化器のように、この「水のインフラ」がなければ現代の生活は成り立ちません。本記事は、これから家を建てようとする方々が、給排水設備の役割、仕組み、そして家づくりにおける重要性を深く理解するためのガイドとなることを目指しています。



給水・排水設備の基本を知る


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住宅の給排水設備は、水を供給する「給水」と、使った水を排出する「排水」に大別されます。給水は、浄水場で処理された水が道路下の水道本管から宅内に引き込まれ、給水管を通じて各蛇口へ届く仕組みです。戸建住宅では、水道本管の水圧を直接利用する「直結直圧給水方式」が主流で、衛生的で維持管理が容易なのが特徴です。水道メーターは水道料金を算出する計量器であり、使用していないのにメーター内の銀色のコマが回転する場合は漏水の疑いがあります。

一方、排水はトイレの「汚水」、台所や浴室などからの「雑排水」、そして「雨水」に分けられ、それぞれ別の排水管を通って下水管へ流されます。重要な役割を担うのが「排水トラップ」で、配管の一部に水を溜めて「封水」を作り、下水管からの悪臭や害虫の侵入を防ぎます。この封水が排水時の気圧変動で破られないよう、「通気管」が空気の通り道を確保しています。また、家庭の排水設備は公共のインフラと密接につながっており、油や生ごみなどを安易に流すと下水管の詰まりや公共インフラの機能低下につながるため、日々の使い方に配慮が必要です。



新築時の工事と素材の選び方


給水・給湯配管_image_id_87


新築時の給排水工事は、水道本管から宅地内に給水管を引き込む「引き込み工事」と、建物内の配管を行う「宅内配管工事」に分かれます。引き込み工事の費用は、水道本管からの距離や給水管の口径によって大きく変動するため、土地選びの段階で確認しておくことが予算管理の重要なポイントとなります。

給排水管の素材は、耐久性とコストに影響を与えます。広く普及している硬質塩化ビニル管は軽量で安価、耐食性にも優れ、土中に埋設された場合は50年以上持つと言われています。一方、ステンレス管は導入コストが高いものの、腐食に強く耐用年数は半永久的とも言われます。配管本体の耐久性は高くても、パッキンなどの部品は10〜15年で劣化するため、素材選びは初期費用だけでなく、長期的なメンテナンス費用とのバランスを考慮することが重要です。



長期的な安心を守るメンテナンス


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給排水設備は日々の手入れと定期的な点検によって、トラブルを未然に防ぎ、大きな費用を回避できます。キッチンの油分や食べかすは紙などで拭き取ってから流し、トイレには水に溶けない異物を流さないといった、毎日の心がけが最も重要です。また、市販のパイプクリーナーや重曹を使った定期的な洗浄も効果的です。

万が一、水漏れなどのトラブルが発生した場合は、慌てずにまず止水栓や元栓を閉めて水の供給を止め、被害の拡大を防ぎましょう。排水が遅い、異音がするなどの症状は詰まりの初期兆候かもしれません。自分で対処しても改善しない場合や、固形物を流してしまった場合は、無理をせず専門業者に相談することが、被害を最小限に抑える賢明な判断です。



信頼できる業者選びのポイント


キッチンと作業着姿の男性_image_id_85


給水装置工事は「水道局指定工事店」として各自治体から認定された業者でなければ施工できないと、水道法で定められています。これは、不適切な工事が公衆衛生に影響を与えるのを防ぐための重要な制度です。

信頼できる業者を選ぶためには、いくつかのポイントがあります。まず、必ず「水道局指定工事店」であるかを確認しましょう。次に、できれば3社から相見積もりを取り、料金だけでなく、工事内容や使用資材、保証内容まで詳しく比較検討すると良いでしょう。見積書に「一式」といった不明瞭な記載がないか、材料費や工賃が細かく明記されているかもチェックしましょう。また、企業のウェブサイトで所在地や実績を確認しましょう。高圧的な態度で契約を急かす業者には注意が必要です。



おわりに:水回りの安心は、住まいの安心へ


給排水設備は、住まいの見えないところで働き続ける、静かなる功労者です。この記事を通じて得た知識は、これから迎える新生活の大きな安心につながるはずです。